大阪地方裁判所 平成11年(モ)5656号 決定
②事件
申立人(原告)
A
右代理人弁護士
雪田樹理 石田法子 大橋恭子 角野とく子 河合徹子
川崎裕子 越尾邦仁 小橋るり 小山操子 阪口徳雄
島尾恵理 高瀬久美子 段林和江 辻公雄 寺沢勝子
長岡麻寿恵 乗井弥生 松尾園子 矢倉昌子 養父知美
淺松千寿 秋田一惠 岩城穣 岩永惠子 岩本朗
色川雅子 宇賀神直 江野尻正明 大国和江 小川恭子
小倉京子 笠松健一 加納雄二 片見富士夫 川西渥子
木村治子 小島妙子 児嶋初子 今野久子 財前昌和
澤口嘉代子 城塚健之 白倉典武 谷千恵子 玉木昌美
辻川圭乃 角田由紀子 出口みどり 寺沢達夫 富崎正人
豊川義明 中村れい子 成田教子 西尾弘美 野仲厚治
長谷川京子 馬場久枝 番敦子 秀嶋ゆかり 平山知子
藤井美江 松井繁明 松井千恵子 松田幸子 松本剛
三木恵美子 宮地光子 莚井順子 村田浩治 村田智子
森下弘 門間久美子 山口健一 山下潔 山下道子
山田万里子 横山精一 吉岡睦子 吉原稔 吉岡良治
渡辺和恵
被告
甲野太郎
主文
一 平成一一年(ワ)第八一二一号損害賠償請求事件の一件記録(本閲覧等制限申立事件の事件記録も含む。)全部につき、原告の氏名、住所、生年月日及び愛称については、閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製を請求することができる者を当事者に限る。
二 平成一一年(ワ)第八一二一号損害賠償請求事件の訴状一〇頁五行目ないし七行目の記載部分については、閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製を請求することができる者を当事者に限る。
三 その余の本件申立を却下する。
理由
第一 申立の趣旨及び理由
別紙「訴訟記録閲覧等の制限の申立書」記載のとおり(なお、申立人が特定した閲覧若しくは謄写又は正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製の制限を求める部分は、別紙平成一一年八月一六日付「上申書」記載のとおり)。
第二 当裁判所の判断
一 証拠(疎甲一、二)その他一件記録によれば、以下の事実が一応認められる。
1 申立人は、平成一一年八月三日、甲野太郎を被告として(以下、同人を「被告」という。)、平成一一年(ワ)第八一二一号損害賠償請求事件(以下、「本訴」という。)を提起した。本訴における申立人の主張は、被告からわいせつ行為を受けたというものである。
2 申立人は、平成一一年四月八日に被告よりわいせつ行為を受けたとして、翌九日、大阪地方検察庁に対し、被告を強制わいせつ罪で告訴した。
3 その後、一部の報道機関が、申立人方を執拗に訪問して取材に応じるよう求めたり、申立人の近所から聞き込みをしたり、申立人の在籍する大学にも問い合わせをしたりした。また、写真週刊誌に、申立人の顔写真(但し、目の部分は黒く線が引かれている。)が掲載された。
4 前記1のとおり、同年八月三日、申立人は本訴を提起したが、同日申立人は代理人を通じて記者会見を開き、資料として訴状を要約した書面(疎甲二。以下、「要約書面」という。)を報道関係者に交付した。
二 以上を前提として、本件について判断する。
1 申立人の氏名、住所等申立人を特定するに足りる事項が閲覧等により明らかになれば、本訴訴訟記録中の申立人主張にかかるわいせつ行為等の記載と相まって、わいせつ被害を受けたという申立人にとって重大な秘密が明らかにされることになり、これが申立人が社会生活を送る上で重大な障害になることは容易に推認できるところであって、申立人の氏名特定に資する事実については、閲覧等を当事者に限定することが相当である。
2 次に、関係者を特定する事実について検討する。被告の護衛をしていた警察官の氏名等については、その職務の特殊性を勘案すれば、同人の氏名を訴訟記録上明らかにすることにより、報道機関等が右警察官へ取材攻勢をかけ、そこから申立人の氏名が判明する具体的おそれがあるとの因果関係の疎明はなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。また、その余の申立人主張にかかる関係者は、いずれも被告側の人物であり、右関係者らの氏名等の閲覧等を制限したからといって、同人らが申立人の氏名を明らかにするおそれはないとはいえないのであって(もとより、同人らがみだりに申立人の氏名等を公表することは、申立人との関係で不法行為を構成することはありうる。)、閲覧等制限と秘密保持との間の因果関係があるとの疎明はなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
3 さらに、わいせつ行為の具体的態様について検討するに、前記認定のとおり、申立人の代理人らは、本訴提起後直ちに報道関係者に対して記者会見を開き、その際要約書面を配布しており、その内容には、本件で申立人が閲覧等の制限を求めている部分も相当部分含まれているのであって、少なくとも右要約書面において公開している内容については、もはや申立人の私生活上の秘密であるとはいえないことは明白であるところ、閲覧等の制限を求めている、申立人が本訴被告から受けたとするわいせつ行為の核心部分はいずれも既に公開されているから、私生活上の秘密であるとはいえない(もっとも、主文第二項に掲げた部分については、必ずしも要約書面において公開されているとはいえないから、右部分については私生活上の秘密として閲覧等制限の対象となるというべきである。)。
三 結論
よって、本件申立は主文第一項及び第二項記載の限度で理由があり、その余は理由がないから、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官林圭介 裁判官森純子 裁判官髙原知明)
別紙申立書<省略>